先天性甲状腺機能低下症の話
- 1月11日
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先天性甲状腺機能低下症とは…
生まれつき甲状腺の働きが良くない病気です。先天性甲状腺機能低下症が正式な名前です。
しかし、名前が長いため、以前は通称クレチン症と言われていましたが、不適切な言葉とされ、現在は使われなくなりました。英語では Congenital Hypothyroidism と言うため、CHと略されます。
甲状腺ホルモンは、乳幼児期の脳や神経の発達、からだの成長に不可欠なホルモンです。このホルモンが極端に不足した(すなわち典型的な)CHで、発見が遅れると知能障害は治療によっても回復しません。昔はCH患者の3分の2が知的障害を伴っていました。しかし、乳児早期に発見して治療すれば、知能障害になる率が低いことが分かってきました。
1979年から全国的にCHに対する新生児マススクリーニング(先天代謝異常症等のスクリーニング検査)が行われ、生まれて4~5日で検査されるようになりました。その結果、早期発見・早期治療が実現し、ほとんどのCH患者は全く正常な生活が送れるようになっています。私が診ている患者さんの中にも、欠損性(甲状腺がない)で重症でしたが、新生児マススクリーニングで見つかり、早期に十分な治療を受けたおかげで大学を卒業し、航空力学を研究する大学院に進み、立派な社会人になった方もいます。
治療は、甲状腺ホルモンを1日1回内服するだけです。私は「道路の凹みを埋めるようなもの」と説明しています。ちょうど良く埋めれば平らになり、全く普通のこどもと同じ状態になるわけです。「生活も予防接種なども普通に行いましょう」と説明しています。平らに補強されているかどうかは、定期的な血液検査でホルモンの値を調べ、薬の量を調節します。
マススクリーニングで異常となったからといって、直ちにCHとは言えません。スクリーニングは「精密検査をした方がよいでしょう」という判断であり、精密検査の時点では正常であることもあります。診察の際にCHが疑われれば、すぐに治療を開始しますが、検査結果が分かってから治療を考えることもあります。過剰にご心配なさらないでください。
CHの最も多い原因は「異所性」といって、本来の場所(のど仏あたり)に甲状腺がなく、発育の悪い甲状腺を持つ場合です。次に多いのが「欠損性」で、甲状腺が形成されなかった場合です。次が「ホルモン合成障害性」で、甲状腺は正常な位置に存在しますが、甲状腺ホルモンを合成する過程に異常があり、作ることができない場合です。そのほかにも稀な原因があります。原因の検査は治療には直接関係しないため、特殊な場合を除いて、現在は行っていません。
いのまたこどもクリニック院長
猪股 弘明
